企業の救世主

「QC(品質管理)ニッポン」の時代は終わったのでしょうか。

いま、米トップ企業のエグゼクティブの間では、"フロリダもうで"が始まっています。

フロリダ半島オーランドの近郊ウィンターパーク。

ここにQCの"伝道師"と呼ばれる男性の総本山があります。

コンピューター界の覇者IBMの幹部たちが、品質向上の手ほどきを受けに、真っ先に足を運びました。

目下は、世界一の自動車メーカー、GMのエリートたちが入れ代わり立ち代り特訓を受けています。

彼が自ら会長を勤めるコンサルタント会社は、5年前に設立されたばかりですが、同社の門をたたくエグゼクティブは後を絶ちません。

これほどまでに、何が彼らをひきつけるのでしょうか。

「これまでアメリカでは、欠陥品が出たりすると、工場の品質管理部門に責任のすべてを押し付ける傾向があったんですよ。

それじゃだめ。

会長、社長らトップから工員まで含めて会社全体で反省し、欠陥品をなくすにはどうしたらいいか、みんなで考えて総合戦略を立てなきゃいけない。

・・・こういつも言っているんですよ。」

しがらみのない強み

摂氏38度。

北カリフォルニアの夏は乾き切った砂漠の暑さです。

水田の緑は不思議な光景にすら見えます。

これを可能にしたのはシエラネバダ山脈からの大規模な水利です。

かつてやせた牧草地だった土地に現出した人工的農地に、のどかな"田んぼ"の歴史はありません。

コメエ場なのです。

「ハロー、ナイス・ライス・デー!」

彼は間のびした実にお百姓さんらしいあいさつを農民たちと交わします。

しかし、頭の中には湿っぽさのない、無機質な合理性がつまっています。

彼らの強さは、伝統というしがらみの欠如そのものではないかと思いました。

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「日本にもコメを売りたい」

こうした企業家的機転は、その後も働きました。

ある自然食会社の日本のポンセンベイに人気があるのをみて、早速日本から自動製造機を入れて売り出したし、その会社への無農薬米出荷を突然やめ、自社商標にしてしまったこともあるそうです。

無論、相手は腹を立てたが、生き馬の目を抜く競争社会では当たり前のこと。

彼の農場の10アール当たりモミ米収穫量は約790キロ。

アメリカではこれが平均ですが、日本の580キロを大きく上回っています。

農家売り渡しのモミ価格は100ポンド(45.3キロ)当たり7ドル(約1690円)。

日本の約4分の1です。

「日本にもコメを売りたいが、日本への輸出は、日本の農民団体を刺激して、日米間の政治問題になるというじゃないか」

問題が微妙なことは、心得ています。

しかし・・・。

「これなら日本で売れないか」と、彼がわたしにアメリカ原産の真っ黒いワイルドライスを握らせました。

一見、コメではありません。

いかにも、自然食といったかんじ。

「これなら日本の市場を荒らすことはないだろう。東京へ帰ったら調べてくれないか」

この抜け目なさが、企業としての農業を支えているのでしょう。

土地づくりから販売までコンピューター その2

「私は農民というより企業家だ。

コメを作るだけなら造作ない。問題は販売だよ」

精米、耕作など専門分野に40人の従業員を抱え、直接土に触れる必要のない彼は、確かに企業家です。

作業には実際、ほとんど直接人手がかからないそうです。

田植えがありません。

空からモミをまきます。

刈り取りは大型コンバイン。

かんがいの水は常に豊富で、水量をチェックするだけでいいのです。

彼は自家用セスナ機で商談のためにアメリカ中を飛び回ります。

彼の兄弟の農場のコメは、独自の商標がついています。

これも最近ではすっかり定着しました。

70年ごろ始まった健康食品ブームに乗って、彼の家では精米施設を作り、玄米販売に乗り出しました。

アメリカでは農家は、モミを精米会社に売るのが普通です。

農薬の使用を最低限に抑え、自然食のイメージを売り込んだのが成功のもとでした。

土地づくりから販売までコンピューター

車で近づくと、ブルドーザーの運転席の男が叫びました。

「眠くなっちゃうよ」。

運転手はハンドルを握っているだけでいいのです。

飛行機とブルを除けば、動くものは何もありません。

あとは灼熱の太陽・・・。

こんな光景をしばらくの間眺めていました。

退屈の極限に達しました。

この平野の真ん中にある小さな町、リッチベルでのことです。

この町で知り合った男性はちっとも退屈していませんでした。

アメリカ中で、恐らく、最も機械化した農場を経営する男性でした。

今、日本ではコメ輸入自由化への警戒論が盛んです。

日本の農民が最も恐れている安くてうまいカリフォルニア米の産地に飛び込んで、大規模で、ハイテクを活用したコメ作りで評判の男として紹介されたのが彼でした。

この町で最大の、1480ヘクタールの"無人農場"の一角に冷房のきいた事務所があります。

そこで毎日、コンピューターに入れた経営データのチェックに余念がありません。

大規模コメ作り

カリフォルニア州北部のサクラメントバレー。

ここでは青々とした稲が穂をそろえています。

その上を複葉機が曲芸飛行のように旋回しています。

化学肥料をまいているのです。

見渡すかぎり人の気配はありません。

遠くに、もうもうと噴き上がる土煙が・・・。

休耕田をならすブルドーザーです。

水田の水深を一定にするためですね。

しかし、測量などしません。

レーザー塔が威力を発揮します。

高さ4メートル。

その先端から半径300ヘクタールにわたって光線が発射されるのです。

それを受けたブルの歯が自動的に上下して地面をならします。

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アイデア農業

1869年の大陸横断鉄道開通とともに、サザン・パシフィック鉄道により開発された広大なサンホワキンバレー。

過去1世紀、ここは、才能があり努力する農民に果てしない可能性を与え、停滞する農民を容赦なく切り捨てました。

農地は転々とその所有者を変えてきたのです。

最近では、ブドウ価格の低下と、底辺で農業を支えるメキシコ人労働者の賃金上昇で、バレーの農業は新たな曲がり角を迎えています。

こうした中で、石油資本を中心とする大資本の農地買いあさりが着々と進んでいる、といいます。

激しい変化の中で変わらないのは、豊かな実りを約束する太陽と、底辺労働者としてのメキシコ人だけ。

これから100年後、果たしてだれがこの大地の主人公となっているのでしょうか。

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